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ドラマ『絆 走れ奇跡の子馬』感想・ネタバレ!息子の死を乗り越えた現実主義者・佳世子(田中裕子)と雅之(役所広司)将子(新垣結衣)は家族の絆を取り戻すことができるのか。

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3月23日・24日の2夜連続の前後編で放送されたドラマ『絆~走れ奇跡の子馬~』感想、ネタバレをレポートします。

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NHKが制作した東日本大震災後の牧場を舞台とした役所広司さん主演によるヒューマンドラマです。

 

昨年大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に主演された女優・新垣結衣さんが、ラブコメディから一転して本格派ドラマに出演するということで話題となりました。

 

あらすじ、ネタバレ、出演キャストについては下記の記事で言及していますのでチェックしてみてください。

 

 

tetsutyler-durden.hatenablog.com

tetsutyler-durden.hatenablog.com

 

   

感想

ドラマが始まってすぐ、岡田将生さん演じる息子の拓馬が、生まれたばかりの子馬・リヤンを守るために津波に巻き込まれて自らの命を落としてしまうという、非常に悲しい展開で、この時点で辛くて見ていられないという人も多かったようです。

 

私も忘れかけていた震災の記憶がよみがえってきて、かなり暗い気持ちになってしまいました。

 

ただこのドラマの意図として、辛い震災の記憶を風化させないで残していこう、どん底の状態からでも人は起ち上がっていけるんだということを再認識することが盛り込まれたものだと思うので、目をそらさずにしっかり見てみることにしました。

 

さて、私はこのドラマを田中裕子さん演じる母・佳世子の視点で主にとらえてみました。

 

ぶっきら棒な物言いと態度なので、頑固なだけに見えてしまうかもしれませんが、私は彼女こそ内面的には松下家の中で一番繊細な人物だと感じました。

 

息子を失った悲しみを、父と娘はリヤンを競走馬に育てるということに注力することで前向きな力に変えて乗り越えようとしています。

 

しかし、母はそう簡単に割り切ることができません。

気持ちがどうしても拓馬のことを想って止まってしまうのです。

 

一概に比較はできませんが、一緒に仕事をしていたとはいえあまり多くを語らない父や、就職して東京で働いていた娘よりも、やはり拓馬と一番深く関わって過ごしてきたのは自分であり、一番の理解者だという思いが強かったと思います。

 

夫や娘が拓馬の「遺した馬」と言い出して、家族の全てをささげ始めたら、家族の一員である自分の気持ちはどうなるの?と言いたくもなります。

 

逆に佳世子は、リヤンが競走馬に育っても拓馬は戻ってこないし、息子を失ったという事実からくる悲しみは癒すことはできないということを理解している現実主義者です。

 

それでも理想や感情で目の前の出来事を進めていく夫や娘を放っておくことはできず、無理をして倒れてしまった夫を見かねて最後は二人に協力することを選択しました。

 

「お父さんは一人じゃない。二人でいきていこう」

 

そういった佳世子の言葉には、息子を失ったうえに夫までも失ってしまっては、自分も前向きに生きていくことはできないという思いに駆られた心情があったのではないでしょうか。

 

結局、現実主義者だった佳世子は、息子の死を受け入れられずにリヤンにその面影を重ねてしまう理想主義者の夫と娘との絆を保つため、拓馬の死を乗り越えた、という形になるのではないでしょうか。

 

物語はリヤンが競走馬として走り始めるところでエンディングを迎えます。

震災でどん底に落ちた家族に、希望の光が見え始めたという風な見え方になるかと思います。

 

しかし、息子の影をリヤンに重ねていた雅之と将子は、その後リヤンが引退し、亡くなってしまったあと、自分の心の中で本当に拓馬の死を乗り越えて前に進む人生を歩んできた、と感じることができるのでしょうか。

 

残酷な話ですが、亡くなってしまった息子よりも、残された家族との絆を選択した母・佳世子と本当の意味で一つの家族として前向きな人生を歩むことができることを願わずにはいられません。


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